コロナ休業給付 全ての対象者へ迅速に

 
新型コロナウイルス感染症による業績悪化などで、勤務先から休業手当が支払われなかった中小企業の労働者が国に直接申請できる給付金制度が先月始まった。

 
だが利用が広がらず、支給が決まった人も申請者の3割程度にとどまる。企業側が会社都合による休業だと認めず、泣き寝入りする例もある。制度が十分機能しているとは言い難い。

 
制度の周知徹底と、煩雑な手続きの改善が求められる。
休業手当を受け取れず、生活が困窮する人や学費の払えない学生もいる。状況は深刻だ。国は申請を容易にし、速やかな支給に努めねばならない。

 
新たな制度は「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」。6月に成立した雇用保険法の臨時特例法に盛り込まれた。
対象は4~9月に会社の指示で休業したのに休業手当を支払ってもらえない人だ。

 
パートやアルバイト、契約社員らも申請でき、日額1万1千円を上限に休業前賃金の8割を休業日数に応じて支給される。離職した場合でも在職中に休業手当をもらえなかった期間分を受け取れる。

 
給付金の申請書は、企業の指示による休業であることを勤務先に記入してもらう。企業が協力しなければ、国が代わって企業に報告を求める流れだ。
解雇などの不利益を恐れ、労働者が企業に強く申し出ることは難しかろう。国は企業側に制度の仕組みを丁寧に説明し、協力を得る努力が欠かせない。

 
1カ月の所定労働日数が明確でなく、シフト削減などどこまでを会社都合の休業と認めるか線引きが難しい場合もある。コロナ以前の勤務実績などで救済する方策を確実にする必要がある。

 
給付金制度は課題も多い。休業手当は「平均賃金の6割以上」と法で定めるが、たとえ基準を大きく下回る額でも支給されていれば制度は利用できない。
大企業は対象外だが、休業手当が払われない例も出ている。働く人の視点で再検討が不可欠だ。

 
休業手当の企業向け支援には雇用調整助成金がある。雇用を維持すれば、日額1万5千円を上限に休業手当の10割が助成される。
本来は企業が休業手当を支給し、労働者の生活を守るのが筋だ。

 
この特例措置に関し、国は9月末の期限を12月末まで再延長する方向で検討している。コロナ禍の出口が見えぬ中、給付金制度も延長すべきではないか。